僕にとって、いや、僕に限ったことだけではないだろう。
この10年の月日は日本を一変させた。
僕はただこの小さな日常を記録したかっただけだった。
時が過ぎていくとともにその小さな日常は刻々と移り変わっていった。
可愛がってくれた祖父母も、
魚釣りをしたあの河岸も、
旅先の老夫婦の呑み屋も、
近所の行きつけの定食屋も、
あの行き先もなく歩いた畦道も、
故郷のあの頃の町並みも、
今はもうなくなってしまった。
前作から続いた長い旅路のなかで、僕が残した風景にどんな意味があったのかという答えは終に見いだすことはできなかった。
もしかしたら答えなどないものを探し続けているのかもしれない。
ただ、たくさんの旅のなかで出会った人々や町々が僕にたくさんのことを教えてくれた。
その何気ないひとつひとつのことが僕に次の一歩を踏み出させてくれた気がする。
きっと僕はこの先もこの眼前に広がる流れゆく世界の前に立ち、答えのない答えを探し続けて、終わらない写真への新たな旅路へとまた歩み続けていくのだろう。
(あとがきより)
2021年1月1日発行
編集発行人:大田道貴
ブックデザイン:加藤勝也
A4変型版/上製本/写真105点/112頁/4000円+税
¥ 4,400